[民法]物権的請求権(行為請求権説)

民法

物権的請求権の内容

物権」とは、物を支配する権利のことを指します。

また、「物」については、以下の記事を参照ください。

物権は、物を支配する権利ですが、第三者によって「侵害」され、または「侵害されるおそれが生じること」があります。

このような場合に、国家が「物権」の実現を権利者に保障して、「物権」が第三者によって「侵害」され、または「侵害されるおそれが生じた」ときに、権利者の「物に対する支配」を回復・保全するための手段が必要です。

この「物に対する支配」を回復・保全する手段が「物権的請求権」です。

物権的請求権には、法律の根拠がありません。

認められている根拠は、「物権」が絶対的な排他的性質を持っているためだと言われています。

物権的請求権の根拠

物権的請求権をするためには、「物権」を有することが求められます。
例えば、「所有権」に基づく物権的請求をする場合、「所有権」を有することが必要です。

★たとえば、「他人物売買」によって、土地を購入した場合には無権利者からの譲受けなので、所有権が移転する時点は、「売主が所有者から後日にその物の所有権を取得した時点」ですから、これまでは、「所有権」しておらず、物権的請求はできません。

物権的請求権の種類

物権的請求権には、3つのものがあります。

物権的返還請求権

物権的返還請求」とは、物権を有する者に帰属すべき物を第三者が「占有を奪う」という形で侵害された場合に、物を占有する者に対して、占有を返還せよと求める権利をいいます。

具体例

 「給料100ヶ月分貯めて1000万円の時計を買ったぜ」
 「これで、同窓会でバカにされないぞ!」

 「ひっひっひ。こんな不用心な家にこんな高級そうな時計があるとは・・・」
 「楽な仕事だぜ・・・」

・・・翌朝・・・

 「時計がなあああああーーい!!」

★ 腕時計の所有権を「占有を奪う」という形で侵害されている状態です。

⇒このような場合に、物権的返還請求権を行使することができます

物権的妨害排除請求権

妨害排除請求権」とは、物権を有する者に帰属すべき物を第三者が「占有を奪う以外の方法」で侵害している場合に、その第三者に対して妨害をやめるように求める権利をいいます。

具体例

 「庭付きの最高のマイホームで飲む酒は、格別やわ・・・」
 「ん・・・?」

 「誰や!わしの家の前に車捨てていったやつ!!」 

★ 土地の所有権を「占有を奪う以外の方法」で侵害されている状態です。

⇒このような場合に、妨害排除請求権を行使することができます

物権的妨害予防請求権

物権的妨害予防請求権」とは、妨害がすでに生じているわけではなく、妨害される具体的危険が存在するとき、物権を根拠として第三者に対して、妨害を生じさせないよう予防措置を求める権利をいいます。

具体例

 「外からでもよく見える、最新のマイホームを手に入れたわ」
 「これで、わたしの趣味も満足にできそうね・・・」
 「あら・・・?」

 「隣のなんとかっている塔、今にも倒れてきそうじゃない!!」 

★もし塔が倒れれば、建物に直撃して倒壊する危険性があります。これは、「妨害される具体的危険性が存在する」状況です。

⇒このような場合に、物権的妨害予防請求権を行使することができます

物権的請求権の性質

「物権的請求権」の性質について、「行為請求権説」と「認容請求権説」の争いがあります。

行為請求権説

行為請求権説」とは、物権請求の相手方に対して侵害行為によって生じた侵害状態を「除去する行為を求めること」が、物権的請求権であるとする考え方です。

簡単にいうと、物権的返還請求権は、「その物は私の物だから、『その物を返す行為をしてください』」という請求権であると考えます。

認容請求権説

認容請求権説」とは、物権請求の相手方に対して、自らおこなう侵害状態の「除去を受忍するように求めること」が、物権的請求権であるとする考え方です。

簡単にいうと、物権的返還請求権は、「その物は私の物だから、『その物を私のところに戻すことを認めてください』」という請求権であると考えます。

両説の違い

「行為請求権説」を採用した場合には、「請求の相手方」が妨害状態を回復・排除するための具体的な行為をすることになります。そのため、この妨害状態の回復・排除のための費用は、「相手方」が負担することになります。

一方で、「認容請求権説」を採用した場合には、「請求した本人」が妨害状態を回復・除去するための具体的な行為をすることになります。そのため、この妨害状態の回復・排除のための費用は、「本人」が負担することになります。

結論

判例は、基本的に行為請求権説を採用しています(最判昭和7年11月9日 民集11巻2277頁)。そのため、原則として行為請求権であると考えて問題ありません。これは、所有権に十分な法的保護を与えるという観点から、妥当だといえます。
 しかし、物権的請求権が衝突する場合(私の土地から排除しろ!vs私のもの返せ!)など、行為請求権と解すると妥当性を欠く場合には、認容請求権であると考えるのが妥当です。具体的には、「請求の相手方の行為によらず侵害が発生した場合」には、認容請求権となると考えるのが妥当だといえます。

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