[刑訴法]捜索差押許可状の効力が及ぶ範囲(差押えの範囲)

刑事訴訟法

差押えの対象

差押許可状により差し押さえることができる物は、令状に記載された「差し押さえるべき物」(219条1項)に該当する物に限定されます。

刑事訴訟法219条(差押え等の令状の方式)

1 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

2 ……

捜査機関が差し押さえようとする物が令状記載の「差し押さえるべき物」に該当するためには、

当該物が許可状記載の差押目的物の品目(類型)に合致すること(記載物件該当性)

当該物が差押えの根拠となった被疑事実と関連性を有すること(被疑事実との関連性)

の2要件を満たさなければなりません。

要件①記載物件該当性

捜査機関は、令状発付により裁判官から許可された範囲内でしか差し押えることができないため、令状記載の品目に当たることが必要です。

例えば、差し押さえるべき物が「帳簿」の場合、日記は「帳簿」の類型には該当しないため、差し押さえることができません。

要件②被疑事実との関連性

裁判官は、令状請求の根拠となった被疑事実の「証拠物」(222条1項、99条1項)と思料される物に限って差押えを許可しています。被疑事実との関連性を有しない物は「証拠物」に該当しません。

刑事訴訟は事案の真相を解明し刑罰権の存否及び量を確定することが目的であるため、「証拠物」(222条1項、99条1項)とは、被疑事実自体の証拠(直接証拠、間接証拠、補助証拠)に限られず、量刑に影響を及ぼす情状事実を立証するための情状証拠背景証拠なども含まれます。

別件の証拠物を発見した場合にとりうる措置

ある犯罪(本罪)の捜索差押許可状を得て捜索しているときに、別の犯罪の証拠物を発見したとしても、本罪の捜索差押許可状によって当該証拠物を差し押さえることはできません。

その場合、下記3つの方法が考えられます。

  1. 任意提出を受けて領置する(221条)
  2. 別罪についての捜索差押許可状を得て差し押さえる(218条)
  3. 逮捕に伴い無令状で差し押さえる(220条1項・3項)(覚せい剤等を所持している場合)

方法2については、別罪についての捜索差押許可状の発付を待っている間に証拠隠滅されるおそれがあります。その場合、証拠隠滅を防止するため、別罪の捜索差押許可状を得るまでの間、現場への出入りを禁止することができます(222条1項、112条)。

関連論点

令状による捜索・差押えについては、以下の記事を参照ください。

電磁的記録媒体の捜索・差押えについては、以下の記事を参照ください。

別件捜索・差押えについては、以下の記事を参照ください。

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