[刑訴法]捜索差押許可状の呈示

複数の時計 刑事訴訟法
ほくる
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令状を執行するには、令状呈示をすることが手続上求められているけど、「どのタイミング」で「誰に対して」すれば手続として適法なの?
そもそも、根拠法令ってどこにあるの?

令状呈示とは?

令状の執行の際には、「処分を受ける者」に令状を呈示しなければなりません(222条1項、110条)。

刑事訴訟法222条(押収・捜索・検証に関する準用規定、検証の時刻の制限、被疑者の立会い、身体検査を拒否した者に対する制裁)

1 第99条1項、第100条、第102条から第105条まで、第110条から第112条まで、第114条、第115条及び第118条から第124条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第218条、第220条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第110条、第110条の2、第112条、第114条、第118条、第129条、第131条及び第137条から第140条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第218条又は第220条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第122条から第124条までに規定する処分をすることができない。

2 ……

刑事訴訟法110条(執行の方法)

差押状、記録命令付差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない

令状呈示の趣旨は、以下の2つの点にあるとされています(最決平成14.10.4)。

手続の公正性を担保すること

処分を受ける者の人権に配慮すること

令状呈示により、捜索・差押えに対する最大の利害関係人である被処分者自身が、裁判官の事前判断が行われた旨および捜索・差押えが許可された範囲を確認することができます。

また、その許可の範囲外で処分が行われた場合に中止・是正を求めたり、違法な差押えに対する不服申立て(430条)を行ったりすることが可能になります(『リーガルクエスト刑事訴訟法(第2版)』127頁)。

令状呈示の時期の問題

110条は令状を呈示する時期については何も規定していません。

Q.では、具体的には、いつ令状を呈示すればいいのでしょうか。

原則

 呈示の時期について明文の定めは有りませんが、令状呈示の趣旨が、手続の公正を担保するとともに、被処分者の人権に配慮することにあることから、令状の呈示は、原則として令状の執行に着手する前でなければなりません。

例外

令状の呈示は令状主義そのものの要請ではないため、合理的な理由がある場合には、令状を呈示することなく捜索・差押えを行うことができます。

合理的な理由の一つとして以下の例があります。

最決平成14年10月4日
 常に事前の呈示を要求すると、被処分者が証拠を隠滅する危険があります。そうすると、真実発見の要請(1条)に基づく捜査の必要性が全うできなくなる危険があります。
 そこで、事前に呈示をしていたのでは証拠隠滅が行われる危険性が高い場合には、捜索・差押えの実効性を確保するためにやむを得ないため、例外的に、執行着手後の呈示でも許されます(最決平成14.10.4)。

 その場合でも、捜索・差押えの実効性確保の措置をとってから遅滞なく令状を呈示する必要があります。これは、令状呈示の趣旨を保護する目的を達成するために求められています。

合理的な理由の具体例

・ 被処分者が不在の場合
・ 被処分者が閲読を拒絶した場合

まとめ

令状の呈示は、被処分者に捜索・差押えの範囲を明示し、手続の公正を担保するとともに、不服申立の機会を確保することにある。そのため、原則としてして令状執行に着手する前にする必要がある。

もっとも、被処分者が証拠を隠滅するおそれなど、捜索・差押えの目的が達成されないおそれがある。

「処分を受ける者」とは?

令状は、「処分を受ける者」に呈示しなければなりません(110条)。

Q.では、この「処分を受ける者」とは誰を指しているのでしょうか。

令状呈示の趣旨は、被処分者に捜索差押えの範囲を示して手続の公正性を担保しつつ、その範囲を逸脱した場合には不服申立ての機会を確保して、被処分者の人権を保護することにあります。

そうすると、「処分を受ける者」とは、捜索差押令状の場合、令状記載の「捜索すべき場所」(219条1項)を現実に支配・管理している者を指すと考えます。なぜなら、令状執行により、法益侵害を受けるのは令状執行の現場の支配管理権者であると考えられるからです。

管理権者の具体例

マンションなどの共有部分
⇒マンションの管理人(マスターキーの所有など)

マンション内部の各部屋
⇒賃貸借契約の内容によるが原則として、賃借人が管理人にあたる。

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令状による捜索・差押えに関しては、以下の記事を参照ください。

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