全体像
刑期は、「①法定刑の確定→②処断刑の形成→③宣告刑の決定」という手順で決まります。
下記の2~5が「処断刑の形成」に当たります。
- 構成要件該当性⇒法定刑の確定
- 再犯加重
- 法律上の減軽および免除
- 併合罪加重
- 酌量減軽(情状酌量)
- 宣告刑の決定
法定刑の確定
法定刑とは、法律に規定されている刑のことです。
例えば、刑法199条は、殺人の法定刑を「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」と定めています。
刑法199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
裁判官は、証拠から構成要件該当性(何条の犯罪が成立するか)を認定し、まず、法定刑を確定します。
処断刑の形成
処断刑とは、法定刑に、科刑上一罪の処理、刑種の選択、刑の加重減免等の修正を行い、裁判所が刑の幅を確定することによって得られた刑のことです。
例えば、法定刑が「10年以上20年以下の懲役」だとしても、被告人が犯罪後に反省・後悔しているといった事情があれば、刑が「5年以上10年以下の懲役」に減軽される場合があります。この減軽された「5年以上10年以下の懲役」という刑が処断刑です。
刑の加重減軽
刑の加重減軽にはさまざまなものがあり、法律上の加重事由としては、併合罪加重と累犯(再犯)加重があり、法律上の減軽事由には任意的減軽事由と必要的減軽事由があります。裁判上の減軽事由としては、酌量減軽(刑法66条)があります。
加重・減軽の順番は、
- 累犯(再犯)加重
- 法律上の減軽
- 併合罪加重
- 酌量減軽
です(刑法72条)。
累犯(再犯)加重
刑法56条の要件を満たすと再犯になります。3犯以上だと累犯になります(刑法57条)。
再犯・累犯は、その罪について定められている懲役の長期が2倍になります(刑法57条)。加重するのは長期のみです。もっとも、長期を加重したとしても、30年を超えることはできません(刑法14条2項)。
例えば、傷害罪の懲役刑は1ヶ月以上15年以下の懲役ですが、再犯・累犯になると1ヶ月以上30年以下になります。
法律上の減軽
必要的減軽 | 心神耗弱(刑法39条2項)、中止犯(刑法43条但書)、幇助犯(刑法63条) |
任意的減軽 | 過剰防衛(刑法36条2項)、過剰避難(刑法37条1項但書)、障害未遂(刑法43条本文)、自首・首服(刑法42条)など |
法律上の減軽の方法は、刑法68条に定められています。
1号 | 死刑 → 無期懲役・禁錮または10年以上の懲役・禁固 |
2号 | 無期懲役・禁錮 → 7年以上の有期懲役・禁錮 |
3号 | 有期懲役・禁錮 → その長期及び短期を2分の1にする |
4号 | 罰金 → 上限額及び下限額を2分の1にする |
5号 | 拘留 → その長期を2分の1にする |
6号 | 科料 → その上限額を2分の1にする |
併合罪加重
有期懲役・禁錮の場合、併合罪を構成する最も重い犯罪の刑の長期の1.5倍が処断刑の上限になります(刑法47条本文)。ただし、刑の長期は、各罪について定めた刑の長期を合算したものを超えることはできません(刑法47条但書)。また、長期を加重したとしても、30年を超えることはできません(刑法14条2項)。
死刑に処すべき時は、没収を除き、他の刑は科されません(刑法46条1項)。
無期懲役・禁錮に処すべき時は、罰金、科料、没収を除き、他の刑は科されません(刑法46条2項)。
酌量減軽
犯罪の具体的情状に照らして、法定刑又は処断刑の最下限によってもなお刑が重きに失する場合には、裁判所は刑を減軽することができます(刑法66条)。酌量減軽の方法は、上記法律上の減軽の方法(刑法68条)と同様です(刑法71条)。
その際、犯罪の動機、犯行態様、犯罪後の後悔の有無、被告人の生い立ち・生活環境、被害者感情、示談の成否などを考慮します。
1号 | 死刑 → 無期懲役・禁錮または10年以上の懲役・禁固 |
2号 | 無期懲役・禁錮 → 7年以上の有期懲役・禁錮 |
3号 | 有期懲役・禁錮 → その長期及び短期を2分の1にする |
4号 | 罰金 → 上限額及び下限額を2分の1にする |
5号 | 拘留 → その長期を2分の1にする |
6号 | 科料 → その上限額を2分の1にする |
宣告刑の決定
宣告刑とは、処断刑の範囲内で、裁判所が「懲役〇年」など具体的に被告人に言い渡す刑のことです。
裁判官が宣告刑を決定することを量刑(刑の量定)といいます。
量刑は、裁判官の自由な裁量に委ねられますが、恣意的な判断は許されません。
量刑は、行為責任の原則を基礎としつつ、一般予防・特別予防の観点も考慮して判断されます。
「量刑において、起訴されていない犯罪事実(余罪)も考慮できるか」については、以下の記事を参照ください。
コメント