人権享有主体
天皇
【制限的肯定例】
・表現の自由
【否定例】
・被選挙権
特別な法律関係にある者
未決拘禁者
【監獄内の規律について(よど号ハイジャック記事抹消事件)】
「監獄は、多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設であり、右施設内でこれらの者を集団として管理するにあたつては、内部における規律及び秩序を維持し、その正常な状態を保持する必要があるから、この目的のために必要がある場合には、未決勾留によつて拘禁された者についても、この面からその者の身体的自由及びその他の行為の自由に一定の制限が加えられることは、やむをえない」
自由の制限にあたっては、その自由を認めることにより監獄内の規律及び秩序が害されうる相当の蓋然性があると認められることが必要である。
公務員
【労働基本権の保障】
○公務員の労働基本権を原則として保障している。
○【全逓東京中郵事件判決】
公務員の労働基本権制限の4条件
➀労働基本権を尊重確保する必要性、国民生活全体の利益を維持増進する必要とを比較衡量して、合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならない
②国民生活に重大な障害をもたらすおそれのあるものを避けるため必要やむを得ない場合に限られる
③制限違反に対して課して課される不利益は必要な限度をこえないこと(とくに刑事制裁は必要やむを得ない場合に限ること)
④代償措置が講じられるべきこと
○【東京都教組事件】
①あおり行為等を処罰する地方公務員法は文字通りに解釈すれば違憲の疑いがあるとして、合憲限定解釈をする必要があるとした。②また、争議行為・あおり行為について、両者とも違法性の強いもののみが処罰の対象となるとした(二重のしぼり)
○【全農林警職法事件】
全逓東京中郵事件の判例変更。①公務員の地位の特殊性・公務の公共性から国民全体の共同利益への影響を重視し、②公務員の勤務条件は国会の制定した法律・予算によって定められるから政府に対する争議行為はまとはずれである(財政民主主義)、③公務員の争議行為には私企業の場合とは異なり市場抑制力がない、④人事院に対する行政措置要求など代償措置が講じられていることから、公務員の争議行為の一律禁止を合憲とした。
【政治的表現の自由】
○行為の禁止は、もとよりそれに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしたものではなく、行動のもたらす弊害の防止をねらいとしたものである。国家公務員法は、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するものである。この危険は公務員の管理職・非管理職の別、現業・非現業の別、裁量権の範囲の広狭などによって差異をもたらさない。また違反行為がもたらす弊害の大小は違法性の強弱の問題にほかならず、違法性の程度の問題と憲法違反の有無の問題とを混同しており失当である(猿払事件)
○政治的行為とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す。政治的中立性を損なう実質的危険性の有無は、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するとした。(堀越事件)。
外国人
性質説
憲法第3章の人権規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶとし、外国人の人権享有主体性を肯定する。
・外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎない(マクリーン事件)。
【肯定例】
・ 外国人の出国の自由 ○(最大判昭和32年12月25日)
・ 社会権(労働基本権)○(最大判昭和53年10月4日)
・ 裁判を受ける権利 ○(最大判昭和53年10月4日)
・ 請願権 ○(最大判昭和53年10月4日:一般の参政権と性質を異にするため)
・ みだりに指紋の押なつを強制されない自由 ○(最判平成7年12月15日)
・ 我が国の政治的意思決定、その実施に影響を及ぼす活動以外の政治活動の自由 ○(最大判昭和53年10月4日)
在留外国人に対して公務就任権を補償しているか否かについては、判例上判断していない。
【制限的肯定例】
・ 政治活動の自由 △(最大判昭和53年10月4日)
⇒我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、保障が及ぶ。
【否定例】
・ 参政権(選挙権) ×(最大判昭和53年10月4日)
・ 外国人の再入国の自由 ×(最判平成4年11月16日)
・ 外国へ一時旅行する自由 ×(最判平成4年11月16日)
・ 公務員を選定罷免する権利 ×(最判平成7年2月28日)
・ 地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利 ×(最判平成7年2月28日)
・ 国会意思の形成への参画に携わる公務員への就任権 ×(最大判平成17年1月26日)
・ 生活保護法に基づく受給権 ×(最判平成26年7月18日)
【判断していない】
・ 公務就任権
未成年者
【性質説】
憲法第3章の人権規定が当然適用される。しかし、未成年者は心身ともに発達途上であり、判断能力も未熟であるため、保障される人権の性質に従って未成年者の心身の健全な発達を図るための必要最小限度の制約が許される。
・ 憲法15条3項:選挙は成年者(未成年者を除く)による普通選挙によって行う(選挙権)
法人
【人権享有主体性を認める根拠】
○自然人還元型 法人の活動は自然人を通して行われ、その効果は究極的には自然人に帰属する
○社会的実在型 法人が現代社会において一個の社会的実体として重要な活動を営んでいる
【政治献金】最判平成8年3月19日(南九州税理士会政治献金事件)
強制加入団体である税理士会が政治団体に金員を寄附することは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。税理士会が政治団体に対して金員の寄附をすることは、たとえ税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為である。
【肯定例】
・ 経済的自由
・ 信教の自由 ○(最大判昭和45年6月24日)
・ 政治的行為をなす自由 ○(最大判昭和45年6月24日)
【否定例】
・ 選挙権 ×
・ 生存権 ×
・ 人身の自由 ×
憲法13条:基本的人権の限界
公共の福祉
一元的外在制約説
「公共の福祉」は、人権の外にあり、すべての人権を制約するいっぱんてきな原理であり、憲法22条、29条が特に「公共の福祉」としたのは、特別な意味を有しない。
内在・外在二元的制約説
「公共の福祉」により制限される人権は、経済的自由権、社会権に限られ、その他の権利・自由には内在的制約が存在するにとどまる。
一元的内在制約説
「公共の福祉」は、すべての人権に内在し、人権相互間に生じる矛盾・衝突の調節を図るための実質的公平の原理であると考える。
情報関係の権利・自由
法的保護の対象となる利益
・ 私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利(東京地判昭和39年9月28日)
・ 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益(最判平成29年1月31日)
・ 学籍番号、氏名、住所及び電話番号といった個人情報を開示されない期待
・学籍番号,氏名,住所及び電話番号といった個人情報は,大学が個人識別等を行うための単純な情報である。それゆえ,このような個人情報については,プライバシーに係る情報として法的保護の対象とはならない。(令和3年第2問)
⇒×
憲法13条で保障される権利・自由
・ みだりにその容貌・容姿を撮影されない自由(京都府学連事件:最大判昭和44年12月24日)
・ 指紋の押なつを強制されない自由
・ 個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由
・指紋は,それ自体では個人の私生活や人格,思想,信条,良心等個人の内心に関する情報となるものではないが,何人も個人の私生活上の自由の一つとして,みだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する。それゆえ,在留外国人の指紋押なつ制度は,国家機関が正当な理由なく指紋の押なつを強制するものであり,憲法第13条の趣旨に反し,許されない。(令和3年第2問)
⇒×
その他
【喫煙の自由】
「憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならいないものではない」(最大判昭和45年9月16日)
【髪型の自由】
これを保障するとした最高裁判例はない。
(熊本地判昭和60年11月13日 行集36巻11=12号1875頁:百選A5事件)では、憲法13条の問題を論じておらず、裁量権の文脈で検討するに留まっており、人格権に関わる問題と捉えていない。そのため、髪型の自由は、裁判上保障されていないと考えるのが自然である。
(東京地裁平成3年6月21日)「個人の髪型は、個人の自尊心あるいは美的意識と分かちがたく結び付き、特定の髪型を強制することは、身体の一部に対する直接的な干渉となり、強制される者の自尊心を傷つける恐れがあるから、髪型決定の自由が個人の人格価値に直結することは明らかであり、個人が頭髪について髪型を自由に決定しうる権利は、個人が一定の重要な私的事柄について、公権力から干渉されることなく自ら決定することができる権利の一内容として憲法13条により保障されていると解される。」
・髪型の自由は,自己決定権として憲法第13条によって保障されるものである。それゆえ,非行を防止する目的で高校生らしい髪型を維持するよう求める校則の定めが,社会通念上不合理なものとはいえないとしても,これに反した生徒を退学させることは許されない。(令和3年第2問)
⇒×
憲法14条:法の下の平等
【一票の格差】
①社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、投票価値の著しい不平等状態が生じ、②かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。
【国籍法】
「国籍法3条1項は、同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ、日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結びつきの指標となる一定の要件を設けて、これらを充たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたものと解される。……上記目的自体は、合理的な根拠がある」。以上のように、準正により、当該子が家族生活を通じた我が国社会との密接な結び付きが生じることに立法目的の合理的根拠を求めている。
「国籍法が、……非嫡出子についてのみ〔父母の婚姻〕という子にはどうすることもできない父母の身分行為が行われない限り、将来的にも届出によっても日本国籍の取得を認めないとしている点は、今日においては、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、……立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用しているものというほかなく、その結果、不合理な差別を生じさせているものといわざるを得ない」として、違憲とした。
【非嫡出子】
○嫡出性の有無による法定相続分の区別について、民法900条4号の立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量の範囲の限界を超えたものとはいえないと判断した。この基準は合理性の基準であるといえる(最大決平成7年7月5日)。
○実質的関連性の判断を求めるのは、最大決平成7年7月5日の反対意見である。
○嫡出性の有無による法定相続分の区別について、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、憲法14条1項に違反するとの基準で判断している。(最大決平成25年9月4日)
憲法15条:公務員選定罷免権など
【国民の公務員選定罷免権】
公務員の地位の根拠が究極において国民野石にかかっているという点にある。そのため、すべての公務員が国民による直接設定罷免されることを定めていない(最大判昭和24年4月20日)
【立候補の自由】
憲法15条1項の保障する重要な基本的人権の1つ。立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で極めて重要であるためである。(最大判昭和43年12月4日)。
憲法20条1項:信教の自由
・市が忠魂碑を移設と敷地の無償貸与をした行為
⇒ 政教分離規定に違反しない
・知事が大嘗祭に公費で出張し、参列・拝礼した行為
⇒参列の目的は、天皇に対する社会的儀礼を尽くすもので、効果も特定の宗教に対する援助、助長等になるようなものではないから、政教分離規定に違反しない(最判平成14年7月11日)
・県の知事が靖国神社の祭礼に際し、玉串料として公金を支出して奉納した行為
⇒憲法20条3項「宗教的活動」にあたり、政教分離規定に違反する(最大判平成9年4月2日)
・市有地上を無償で使用させた行為
⇒本件利用提供行為は、直接の効果として、氏子集団に宗教的活動を行うことを容易にいしており、援助していると評価でき、この行為が世俗的、公共的目的から始まったものであるものの、明らかな宗教的施設に長期間にわたり継続的に便益を提供している本件の場合には、援助しているといわざるをえないから、政教分離規定に反する。(最大判平成22年1月20日)
・至聖廟等による公園使用料の全額免除処分
⇒本件施設は、孔子の霊を迎えるもので、その霊の存在を前提として、これを崇め奉るという宗教的意義を有する儀式というほかない。また、本件施設に対する使用料を免除している。本件施設が当初の至聖廟等の復元とみなせないこと、及び法令上の文化財に指定されていないことから、文化財としての性質があるとはいえず、「国家と宗教との関わり合い」がある。そして関わり合いの程度として正当化することはできないから、政教分離規定に反する。(最大判令和3年2月24日)。
憲法21条:表現の自由
【事実の報道の自由】
⇒憲法21条の保障のもとにある。国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し、いわゆる国民の知る権利に奉仕する特に重要な自由である。
【報道のための取材の自由】(最大判昭和44年11月26日)
⇒報道機関の報道が正しい内容をもつため憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する
【検索結果の提供行為の規制】(最判平成31年1月31日)
①検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものであり、検索事業者自身による表現行為という側面を有するため、表現行為の制約としての性質を有する。
②また、現代社会においてインターネット上の情報流通に基盤として大きな役割を果たしており、この役割に対する制約にもなる。
【提出命令】
○提出命令の可否について、公正な刑事裁判の実現の必要性、報道機関の取材の自由が妨げられる程度など諸般の事情を比較衡量するとしている。刑事事件の証拠として使用されることによって報道機関が蒙る不利益は、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまること理由に提出命令を受忍すべきと判示した。取材源の秘密については触れていない。(博多駅事件)
【検閲】
行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。
【事前差止め】
事前差止めは、原則として許されないが、①その表現内容が真実でなく、②又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、例外的に事前差止めが許される(北方ジャーナル事件)。
事前差止めが原則として許されない理由は、性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合よりも大きいことにある。
憲法22条:職業選択の自由・移住の自由
【再入国の自由】
再入国の自由は、外国への一時旅行する自由として憲法22条2項にいう「外国に移住・・・・・・する自由」に含まれる。
憲法23条:学問の自由
【学問の自由】
「学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであって、……一面において、広く国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障する」
【大学の自治】
「とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。また、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ、これらについてある程度で大学に自主的な自治維持の機能が認められている。」
【普通教育】
「子どもの教育が、専ら子どもの利益のために、教育を与える者の責務として行われるものであるということからは、教育の内用及び方法を、誰がいかにして決定することができるかとう問題に対する一定の結論は、当然には導かれ」ない。
「普通教育の場においても、……教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては、一定の範囲における教授の自由が保障されるべき」である。しかし、①児童生徒においては、大学教育とは異なり教授内容を批判する能力がなく、②教師が児童生徒に対して強い影響力、支配力を有すること、③子どもの側に学校・教師を選択する余地が乏しいこと、④全国的に一定の水準を確保する要請が強いこと、から普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることはできない。
【親の教育】
「主として家庭教育等学校教育外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えらえる」
・大学の学問の自由と自治は,大学が学術の中心として深く真理を探究し,専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから,教授や研究者の研究,その結果の発表,研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解されており,大学の学生が学問の自由を享有するのは,教授や研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。(令和3年第7問)
⇒○
・大学における学生の集会が大学の学問の自由と自治を享有するか否かは,その集会が真に学問的な研究と発表のためのものか,実社会の政治的社会的活動に当たるかによって判断されるものであり,その集会が公開か否かといった点は考慮されない。(令和3年第7問)
⇒×
憲法24条:婚姻
婚姻をするについての自由
⇒憲法24条1項の趣旨に照らし、十分尊重に値するもの
・この判決は,婚姻をするかどうか,いつ誰と婚姻をするかは当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきこと(婚姻をするについての自由)は,「憲法第24条第1項によって保障される」としています。(令和元年第9問)
⇒×(「憲法24条1項の規定の趣旨に照らし,十分尊重に値するもの」としており、保障するとはしていない。)
憲法25条:生存権
憲法25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
【1項と2項の関係】(最大判昭和57年7月7日:堀木訴訟)
1項は、福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるような国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものである。
2項は、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造充実に努力すべきことを国の責務として宣言したものである。
そして、1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に義務を有することを規定したものではなく、2項によって国の政務であるとされている社会的立法・社会的施設の相続拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解されている。
・憲法第25条第2項で定める防貧施策については広い立法裁量が認められる一方,同条第1項で定める救貧施策については,国は国民の最低限度の生活を保障する責務を負い,前者よりも厳格な違憲審査基準が用いられる。(令和3年第9問)
⇒×(※朝日訴訟の傍論にて、「国の債務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を付与したものではない」と食糧管理法事件判決を援用して述べている)
・障害基礎年金の受給に関し保険料の拠出に関する要件を緩和するかどうかは国の財政事情等にも密接に関連する事項であるが,保険料負担能力のない20歳以上60歳未満の者のうち20歳以上の学生とそれ以外の者との間に障害基礎年金の受給に関し差異が生じた場合,その合憲性については,憲法第25条及び第14条の趣旨に照らし,慎重に検討する必要がある。(令和2年第9問)⇒×
憲法29条:財産権
財産権の保障の範囲
憲法29条1項で「財産権は、これを犯してはならない」と規定していることから、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する。(最大判昭和62年4月22日)
損失補償
「公共のために用いる」
・特定の個人が受益者となる場合も含まれる(最判昭和29年1月22日)
・法律の規定により財産上の権利の行使が制限される場合であっても,災害を未然に防止するという社会生活上のやむを得ない必要からその制限が当然受忍すべきものであるときは,憲法第29条第3項による損失補償を要しない。
⇒○(奈良県ため池条例事件)
・財産上の権利の行使を制限する法律に補償規定が置かれている場合であっても,その法律は,補償の内容が憲法第29条第3項の要求する水準にあるか否かについて,憲法適合性の審査の対象となる。(令和3年第8問)
⇒○(※「農地改革事件」は、自作農創設特別措置法が憲法29条3項と適合的か検討した)
手続保障・刑事補償
手続保障
【刑事手続保障と行政手続】
憲法35条1項の保障は行政手続にも及ぶが、収税官史の検査は、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではないことや、同検査が実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものとは認められないから、あらかじめ令状によることを一般的要件として求めているわけではない(川崎民商事件)。
不利益供述
【供述拒否権の告知】
憲法38条1項は、供述拒否権の告知を義務付けるものではなく、供述拒否権の告知を要するものとすべきかどうかは、その手続の趣旨・目的等により決められるべき立法政策の問題である(最判昭和59年3月27日)。
裁判を受ける権利
裁判を受ける権利
国民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し、裁判所以外の機関によって裁判をされることはないことを保障したものである〔具体的権利〕。
・訴訟法に定める管轄権を有する裁判所において裁判を受ける権利は、保障されない。
・行政不服審査手続は、「裁判」にあたらないから、憲法32条の適用を受けない。
・軽微な刑罰であっても、裁判によらずして刑罰を科すことはできない。
【公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利】
「公平な裁判所」:偏頗のおそれのない裁判所、裁判所の構成等の公平を保障する。
「迅速な裁判」:審理の著しい遅延の結果、被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合には、具体的規定がなくても、憲法37条によって審理を打ち切るという非常救済手段が許される(高田事件判決)
「公開裁判」:対審・判決が公開の法廷で行われる裁判
・判例は,不起訴になった事実に関する抑留又は拘禁であっても,そのうちに実質上は,無罪となった事実についての抑留又は拘禁と認められるものがあるときは,その部分の抑留又は拘禁も,憲法第40条にいう「抑留又は拘禁」に包含されると解している。(令和3年第10問)
⇒○(百129事件)
刑事補償請求権
【刑事補償の趣旨】
憲法40条の趣旨は、身柄の拘束によって国民に生じた身体的・財産的不利益を事後的に補償することにある
【無罪の裁判】
無罪の裁判とは、刑訴法上の手続における無罪の確定判決をいうところ、不処分決定は、刑訴法上の手続とは性質を異にする少年審判の手続における決定である上、決定を経た事件について、刑事訴訟をし、又は家庭裁判所の審判に付することを妨げる効力を有しないから、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、「無罪の裁判」(刑事補償法1条1項)とはいえない。
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