無効
「無効」とは、法律上はじめから存在しなかったものとして扱うことをいいます。
「無効」の特徴
①特定人の行為を待つことなく、初めから当然に効力を持たない
②追認をしても有効にならない(民法119条本文)
③いつでも無効を主張することができる
民法119条(無効な行為の追認)
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
無効の効果
絶対的無効(原則)
原則として「無効」は、すべての者がすべての者に対する関係で、いつまででも主張することができます。そして、上記のような特徴を持っています。
このような、「無効」の効果を「絶対的無効」といいます。
相対的無効(例外)
例外として、無効主張をすることができる者が限定され「無効」の効果を「相対的無効」といいます。
たとえば、意思無能力者がした意思表示の無効は、意思無能力者側しか主張することはできません。
「絶対的無効」に比べると「取消し」に近い効力ですが、①取消しのように取消権者が民法123条の方式に沿った方法でしなければならないという制限もなく、②民法126条のような期間制限が設けられてもいません。
無効行為の追認
無効な行為を追認しても有効な行為とはなりません(民法119条本文)。
無効な行為であることを知ってした追認は。「新たな行為」をしたものとみなされます(民法119条ただし書)。このことを「無効行為の追認」といいます。
「新たな行為をしたものとみなされる」とは、たとえば契約の締結を目的とした行為をしているのであれば、新たな意思表示をしたとみなされることになり、この意思表示が有効であれば有効な契約が締結されることになります。
もっとも、公序良俗違反(民法90条)の行為について追認を行ったとしても無効な行為を繰り返しているだけですので、行為が有効になることはありません。
無効行為の転換
無効行為の転換とは、無効となるはずの法律行為が他の法律行為の要件を充たす場合に、要件を充たす法律行為として有効とすることをいいます。
無効行為の転換の例は、以下のとおりです。
① 地上権設定契約(民法265条)が締結されたが、「工作物又は竹木を所有するため」に設定されたものでないため、無効となるこの契約を賃貸借契約(民法601条)として有効とする
②遺言を「秘密証書遺言」(民法970条)として作成したが、民法970条の要件を充たさず無効となる場合、「自筆証書遺言」(民法968条)として有効とする(民法971条)
無効行為の転換が認められるためには、以下の要件を充たしていることが一般に求められます。
① 無効の法律行為が、他の法律行為の要件を充たすこと
② 行為者が目的とした法律行為の無効を知っていたならば、他の法律行為としての有効であることを求めたこと
無効となる場面
公序良俗違反(民法90条)
心裡留保(民法93条1項)
虚偽表示(民法94条1項)
○類似の制度に「取消し」があります。「取消し」については以下の記事を参照ください。
無効・取消しをした後の法律関係
原状回復義務
民法121条の2(原状回復の義務)
1 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
意思表示・法律行為が、無効または取り消された場合には、両当事者は原状回復義務を負います(民法121条の2第1項)。
コメント