[刑訴法]特に信用すべき書面(特信書面・323条)

刑事訴訟法

条文

323条は、1号から3号の書面について無条件で証拠能力を認めています。

刑事訴訟法323条(その他の書面の証拠能力)
前3条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。

一 戸籍謄本公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面

二 商業帳簿航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面

三 前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面

1号書面(公務文書)

1号の書面が無条件で証拠能力を付与される理由は、この種の書面は高度の「信用性の情況的保障」が類型的に認められるとともに、作成者を証人として尋問することが不都合であり、また書面の記載内容の性質からして公判廷で供述させるよりも書面を用いる方が正確であり有益であるという意味での「必要性」も類型的に認められる点にあります(リークエ2版402頁)。

1号の書面

該当するとされている書面
・登記簿謄本(登記事項証明書)
・印鑑登録証明書
・住民票の写し
・住民票記載事項証明書
・前科調書

※客観性が保障されているため、該当すると考えられています。


該当しないとされている書面
・現行犯逮捕手続書
・捜査報告書
・捜索差押え調書

※特定の事件での事実の立証のため特別に作成された書面は、客観性の保障がないため、該当しないと考えられています。

2号書面(業務文書)

2号の書面が無条件で証拠能力を付与される理由は、この種の書面は、業務遂行の基礎として信用保持等の観点から正確に記載されかつ規則的・機械的・連続的に作成されるので虚偽が介入しにくく、また、書面の記載内容の性質上、作成者に公判廷で供述させるよりも書面を用いる方が正確でありかつ有益であるという点にあります(リークエ2版403頁)。

2号の書面に当たるかどうかを判断する際には、その書面自体の形状、内容だけでなく、その作成者の証言等も資料とすることができます(最決昭和61.3.3)。

2号の書面

該当するとされている書面
・未収金控帳(最決昭和32.11.2)
・医師のカルテ
・作業現場における作業日誌(最決昭和61.3.3)
・タクシーの運転日報

3号書面

323条の趣旨は類型的に高度の信用性と証拠採用の必要性が認められる書面について無条件に証拠能力を認める点にあるため、「特に信用すべき情況の下に作成された書面」(3号)に当たるためには、前2号の書面に匹敵するだけの信用性を保障するような客観的情況の下で作成されたものであることを要します。

その判断基準については、書面自体に高度で類型化された信用性があることが必要であるとする見解と、作成目的や作成経緯等の個別具体的な事情から認められれば足りるとする見解が対立しています(判例講座406頁,407頁)。

3号の書面

該当するとされている書面
・レジスターによって発行されたレシートの物品購入年月日および代金支払いの記載部分
・預金通帳の預入れあるいは払出しの日付と金額の記載部分
・信用ある定期刊行物に記載された株式相場
・法令に根拠を有する統計の統計表
・裏帳簿

該当しないとされている書面
・領収書
・日記
・手紙

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