意思表示
意義
「意思表示」とは、権利変動という法律効果を生じさせようとする意思(効果意思)を外部に示す行為のことをいいます。
意思表示の伝達過程
意思表示の伝達過程は以下のとおりです。
「表明」とは、表意者の効果意思を外部に現す行為のことをいいます。
「発信」とは、意思表示を相手方に送り出す ことをいいます。
「到達」とは、意思表示が相手方に届く ことをいいます。
「了知」とは、相手方が意思表示の存在・内容を知る ことをいいます。
具体的には、以下のようなイメージです。
「先方さんとの契約書を作成してなかったな」
「作成しておこう・・・」(表明)
「よし。できた。先方さんに送信っと」(発信)
「お。メール届いてる。(到達)」
「なになに、もう契約書作ってくれたのか。(了知)あの人仕事早いな。」
意思表示の効力の発生
意思表示が効力を生じるためには「到達」する必要があります(民法97条1項)。
「発信」しても意思表示の効力は生じないので、「発信」から「到達」までの間に生じた問題についてのリスクは、表意者が負うことになります。
民法97条(意思表示の効力発生時期等)
1 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
Q.では、どのような状況におかれれば「到達した」といえるのでしょうか。
「到達」したといえるためには、意思表示を実際に「了知」することは要求されません。了知の可能性があれば足りると解されています。具体的には「意思表示が相手方の支配圏内に置かれることで足りる」とされています(最判昭和36.4.20 民集15巻4号774頁)。
つまり、上記のメールで言えば、相手方のメールBoxに届けば「到達した」といえることになりそうです。
意思能力の欠如
民法3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
意思能力は、「意思能力」の存在を前提としています。そのため、意思能力を欠いた状態でされた法律行為は、無効になります(民法3条の2)。
民法3条の2によって、法律行為が無効となった場合には、民法121条の2に基づいて、原状回復義務を負います。
意思能力を欠いた者の原状回復の範囲は、「現存利益」に限られている(民法121条の2第3項前段)。
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