[民法]代理制度(有権代理、無権代理、表見代理)

民法

総論

意義

代理」とは、本人以外の者(代理人)が、本人のために意思表示をする(能動代理)、または受領すること〈受働代理)によって、法律行為の効果を生じさせて、その効果を本人に帰属させることをいいます。

代理の効果は、代理人がした代理行為(法律行為)の効果が本人に効果帰属することです。

代理の具体例

登場人物 ・・・[本人(親分) 代理人(子分) 取引の相手方(社長)]


親分
親分

 「おい、子分よ。俺の持ってる土地あるやろ。あれ高値で売ってこい」

 「うす。わかりました。」

子分
子分

・・・時・間・経・過・・・

子分
子分

 「社長!!新しい会社建てるのに土地欲しいって言ってませんでした?」

 「おお。せやねん。どっかにええ土地あるけ?」

社長
社長

 「実は、うちの親分が土地を譲ってもいいって言ってるんですよ。」
 「ちょっと値は張るんですけど・・・2億円でどうですか?」

 「あのええ土地け!高くても買わしてもらうわ!」

社長
社長

このとき、売買契約は、代理人である「子分」と取引の相手方である「社長」との間で締結されています。

売買契約の内容は、「社長が所有する土地を2億円で売却する」というもので、代理の要件をみたすと本人である親分と相手方社長との間で、売買契約が締結されたことと同視されます

そうすると、親分は「親分所有の土地を社長に移転する義務」が生じ、社長には、「親分に対して2億円を支払う義務」が生ずることになります。

このように、「代理制度」を用いることで、自分(社長)で行わなくても、あたかも本人が相手方と直接取引をして法律行為を行ったのと同一の効果を生じさせることになります

代理制度の趣旨

なぜ、このような代理制度があるのでしょうか。

その理由は、大きく2つ存在し以下のような意味があります。

私的自治の補充

法律行為を1人で有効に行うためには、意思能力・行為能力が完全に備わっていることが原則として求められます。

しかし、未成年者などのように行為能力が制限され、1人では完全な法律行為をすることができないこともあります。

そのため、社会生活を円滑に過ごすためには誰かに援助をしてもらい私的自治を行う必要があります

このように、行為能力を制限された人などの私的自治を補充する目的を「代理制度」は持っています。

私的自治の拡充

現代社会は、生活の中に様々な契約関係が存在しています。多くの契約を1人で維持・管理をすることには限界があります。

そのため、自身の契約関係を拡張して活動範囲を広げるには、自分以外の者に自分の行動を任せる必要が出てきます

このように、自分の活動範囲を広げるために私的自治を拡充する目的も「代理制度」は持っています。

有権代理

代理の要件

民法99条(代理行為の要件及び効果)

1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

代理が有効に成立するためには、以下の要件が必要です。以下の内容は、代理権授与行為の法的性質について「無名契約説」(通説的見解)であることを前提としています。

「代理権授与行為」の法的性質とは??詳しくは以下をご覧ください。

①代理人と相手方の法律行為があること

②代理人による顕名

③①の法律行為に先立つ、本人が代理人に①についての代理権を授与したこと

有権代理について、詳しくは以下をご覧ください。

代理権の濫用

民法107条(代理権の濫用)

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす

意義

代理権の濫用」とは、代理人が本人から与えられた代理権の範囲内で代理行為をしたものの、本人のために代理行為をする意図ではなくて、自己または第三者の利益を図る目的で代理行為をすることをいいます。

重要なのは、①「代理権の範囲内であること」と②「本人の利益のための代理でないこと」です。

要件

代理権の濫用の要件は以下の通りです。

①代理行為が代理権の範囲内であること

②代理人が自己または第三者の利益を図る目的を有していること

③相手方が①の事実について悪意である、または過失があるとき

効果

「代理権の範囲内」の行為なので、本来は無権代理ではありません。

しかし、民法107条の効果として代理権の濫用は、無権代理とみなしています

無権代理

意義

無権代理」とは、①代理権を持たないで代理行為をする場合、②代理権を授与されているが、代理権の範囲を超えた代理行為をした場合をいいます。

また、「無権代理とみなされる場合」もあります。これらも無権代理と同様の規定を用いることになります。

【「無権代理」とみなされる場合】

・代理権の濫用(民法107条)

・自己契約・双方代理(民法108条1項)

・利益相反行為にあたる代理行為(民法108条2項)

無権代理について、詳しくは以下をご覧ください。

表見代理

意義

無権代理人であるのに、本当に本人との間に代理権が存在すると思える事情があるために、相手方がこの無権代理人の外観を信頼して法律関係に入ってしまうことがあります。

このように、①本人が外観の作出について一定の帰責性があり、②一方で外観を信頼して取引に入った相手方を保護する必要があると認められるときは、「表見代理」が認められます。

「表見代理」は、外観を信頼して取引に入った者を保護する制度です。

そのため、権利外観法理の1つに位置づけられます。

「表見代理」が成立すると、「本人が代理行為について責任を負う」ことになります。

つまり、あたかも代理権が存在していたのと同様の法律効果が生じ、本人に効果帰属することになります。

「表見代理」について、詳しくは以下をご覧ください。

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