総論
法律行為は、原則として法律行為が成立した時点で効力を生じます。
この法律行為の効果の発生時期を当事者の意思によって左右することができます。
その制度が「条件・期限」です。
条件
意義
「条件」とは、将来に発生するかどうかが不確実な事実の成否に法律行為の効力が左右されるとき、「将来、発生するか不確実な事実」のことをいいます。
代表的な条件は、「停止条件」と「解除条件」の二つがあります。
他にも、「既成条件」「不法条件」「不能条件」「随意条件」があります。
内容
効果
「既成条件」
民法127条(条件が成就した場合の効果)
1 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
○「停止条件」は、成就することで成就した時から効力を生じます(民法127条1項)
○「解除条件」は、条件を成就すると法律行為の効力を失います (民法127条2項)
民法127条3項では、上記2つの例外を定めています。
当事者は、合意によって条件成就の効果を条件成就前にさかのぼらせることができます。
既成条件・不能条件
民法131条(既成条件)
1 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。
「条件」を付けていても「条件」の意味が無いときは、条件は「無条件」となります。
一方で、「条件」を付けると法律行為自体が無意味になるときは、法律行為自体が無効となります。
不法条件
民法132条(不法条件)
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
不能条件
民法133条(不能条件)
1 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
民法131条2項の「条件の不成就が確定しているとき」と同様の内容です。
随意条件
民法134条(随意条件)
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
条件成就の妨害
民法130条(条件の成就の妨害等)
1 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
2 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
民法130条1項
民法130条1項は、相手の条件が成就するのを邪魔したときについて規定しています。
「 故意にその条件の成就を妨げたとき 」は、条件は成就したものとみなされます。
妨害する主体は、「条件が成就することによって不利益を受ける当事者」に限定されています。
条件成就したものとみなされますので、停止条件の場合は法律行為の効果が発生し、解除条件の場合は、法律行為の効果が失われます。
民法130条2項
民法130条2項は、「不正」に条件を成就させた時について規定しています。
「不正」とは、信義則に反して故意にという意味です(最判平成6年5月31日 民集48巻4号1029頁)。
成就させる主体は、「 条件が成就することによって利益を受ける当事者」に限定されています。
期限
意義
「期限」とは、将来において発生することが確実な事実に法律行為の効果の発生を委ねるとき、この「将来において発生することが確実な事実」のことをいいます。
期限には、「確定期限」と「不確定期限」があります。
効果
民法135条(期限の到来の効果)
1 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
始期
「始期」とは、法律行為の効力発生を期限にかからせる場合をいいます。
この始期のうち債務の履行期間に関するものを「履行期間」といいます。
履行期間の具体例としては、家を買う契約をして、そのお金は「○○日までに払ってね」というような合意がこれにあたります。そして、民法135条1項は、「法律行為の履行」について定めています。これは、「履行期限」のことです。
そのため、「履行期限」を定めた場合には、期限が到来するまで、請求することはできません(民法135条1項)。
また、法律行為の効力発生に関するものを「停止期限」といいます。
停止期限の具体例としては、「入社の3日前の日である○○日から(3ヶ月後)アパートを貸します」という合意がこれにあたります。
定期期限については、民法に規定はありません。そのため、当事者の合意の内容によって具体例な内容が決まることになります。
終期
「終期」とは、法律行為の消滅を期限にかからせる場合をいいます。
終期の例としては、「賃貸借契約は、2年契約とする」という合意がこれにあたります。
法律行為の効力は、終期の到来した時に消滅します(民法135条2項)。
期限の利益
民法136条〈期限の利益及びその放棄)
1 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
意義
「期限の利益」とは、期限が法律行為に付されることによって、当事者が得る利益のことをいいます。
期限の利益の放棄
期限の利益を有する者は、期限の利益を放棄することができます(民法136条2項本文)。
上記の例でいうと、Bは、1年を待たずに100万円の返済をすることができます。
ただし、「相手方の利益を害すること」はできません(民法136条2項ただし書)。そのため、Bは、1年が経過していないとしても1年の経過でAが得るはずであった1年間分の利息を支払う必要があります。
このように、期限の利益を放棄する者は、相手方に生じうる損失を補填することが求められます。
期限の利益の喪失
民法137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
意義
「期限の利益の喪失」とは、以降、期限の利益を主張することができなくなることをいいます。
民法137条各号に該当した場合には、類型的に当時者間での信頼関係を揺るがす事情であり、債務者の財産状況が悪化している状況であることが多です。
債権者の利益を守る必要性が高い一方で、債務者の財産状況が悪化している状況で未だに期限の利益を主張させる必要性は低いといえるため、債務者の期限の利益の主張が制限されています。
効果の発生時期
期限の利益の喪失事由の発生があったとして、いつの時点で期限の利益を喪失するのかについては2つの見解があります。
いずれの型に該当するかの判断は、当事者間で締結された契約の解釈によってすることになります。
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