[民法]除斥期間

民法

意義

除斥期間」とは、権利者が権利を行使しないという状態が継続した場合に、権利関係を公益的観点から安定させるために権利を消滅させる制度をいいます。

差異

法的効果のみをみると「消滅時効」と同様のように感じます。

しかし、「除斥期間」と「消滅時効」には以下のような違いがあります。

① 除斥期間には、「完成猶予」「更新」がない

② 除斥期間の効果を生じさせるのに「当事者の援用」はいらない

③ 除斥期間の始期は、「権利を行使することができる時」ではなく、権利により異なる

④ 除斥期間には遡及効が認められない

除斥期間一覧

○ 取消権(民法126条)「行為の時から20年」

民法126条(取消権の期間の制限)

取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

○ 盗品等回復請求権(民法193条)「 盗難又は遺失の時から2年間」

民法193条(盗品又は遺失物の回復)

前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

○ 動物占有回復請求権(民法195条)「 占有を離れた時から1箇月以内 」

民法195条(動物の占有による権利の取得)

家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から1箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

○ 占有の訴え(民法201条)「1年以内」

民法201条(占有の訴えの提起期間)

1 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。

3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。

○ 不適齢者の婚姻取消権(民法745条2項)「3箇月間は」

民法745条(不適齢者の婚姻の取消)

1 ・・・

2 不適齢者は、適齢に達した後、なお3箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。

○ 再婚禁止期間の婚姻取消権(民法746条)「100日を経過し」

民法746条(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)

第733条の規定[挿入:再婚禁止の規定です]に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。

○ 詐欺・強迫による婚姻取消権(民法747条2項)「3箇月を経過し」

民法747条(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)

1 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

○ 民法808条1項・民法747条2項:詐欺又は強迫による「縁組」の取消し 「3箇月を経過し」

○ 民法812条・民法747条2項:詐欺又は強迫による協議上の離縁 「6箇月を経過し」

○ 民法866条2項・民法126後段:被後見人の財産等の譲受けの取消し

○ 民法867条 民法866条2項 民法126条後段:未成年被後見人の財産等の譲受けの取消し

○ 民法872条2項 民法126条後段:未成年被後見人と未成年後見人等との間の契約等の取消し

○ 相続回復請求権(民法884条後段):「20年を経過したとき」

民法884条(相続回復請求権)

相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

○ 遺留分侵害請求権(民法1048条)「10年を経過したとき」

民法1048条(遺留分侵害請求権の期間の制限)

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

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