総論
[宅建業法の目的]
宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、必要な規制を行うことにより、業務の適正な運営と宅地建物取引の公正を確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化を図ることにあります(重要事項説明・書面交付制度の概要 国土交通省参照)。
定義規定
第二条(用語の定義)
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
一 宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。
二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。
四 宅地建物取引士 第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。
宅建業とは
「取引」の範囲
宅地建物取引業
「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう(宅建業法2条2号)」と規定しています。
【宅地建物取引業】
・宅地・建物を売却する行為
・交換する行為
・宅地建物の売買・交換・賃貸の代理をする行為
・媒介をする行為
売買 | 交換 | 賃借 | |
当事者となり… | ○ | ○ | ✕(免許不要です) |
媒介をして… | ○ | ○ | ○ |
代理をして… | ○ | ○ | ○ |
宅建士
変更の登録
[ 宅建士資格登録簿 登載事項 ]
① 氏名・住所・本籍
② 宅建業者の称号又は名称、免許証番号
③ 指示処分・事務禁止処分の内容、年月日
①、②の変更 ⇨ 遅滞なく変更の登録申請を行う必要があります。
※ 宅建業者の変更の届出は、「30日」です。違いに注意する必要があります。
注意:事務禁止期間中であっても申請義務があります。
登録の移転
働く場所が他の都道府県に場所に変わった場合に、登録の移転ができます(任意)
死亡等の届出
登録欠格事由 五大悪質行為
① 不正手段による登録
② 不正手段による宅建士証交付を受けた場合
③ 事務禁止処分を受け、情状が特に重い場合
④ 事務禁止処分に違反した場合
⑤ 宅建士でない者が、宅建士としての業を行い、情状が特に重い場合
①~⑤に該当し、宅建士の登録が削除された場合、5年間再登録することはできません。
宅地の定義
「宅地」とは、「建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする(宅建業法2条1号)。」と規定されています。
原則
建物の敷地に供される土地のことを「宅地」といいます。
用途地域との関係について(都市計画法)
原則、用途地域内の土地は「宅地」にあたります。もっとも、用途地域内の土地であっても「道路」「公園」「河川」「広場」は宅地に該当しません。
用途地域外の土地は、「建物の敷地に供される土地」であれば宅地に該当する。
用途地域「外」 | 用途地域「内」 | |
①現在建物がある土地 ②建築予定の土地 | 宅地 | 宅地 |
上記以外の土地 | 宅地でない | 原則:宅地 例外:道路・公園・河川・広場・水路 |
宅建業の特則
① 国などの場合
国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社などは、宅建業法が適用されません。そのため、免許を受けることなく宅建業をすることができます。
注意:農業共同組合は、「国等」に含まれないため、宅建業をするには免許を受ける必要があります。
② 信託会社などの場合
信託会社、信託銀行等は、宅建業をする場合でも免許を受ける必要はありません。
ただし、国土交通大臣に届け出る必要があります。
③ 破産管財人
破産管財人は、営利を目的としません。また、裁判所の監督を受けて業務を行うため、宅建業をする場合でも免許は不要です。
④ みなし宅建業者
原則として、宅建業の免許は一身専属権であるため相続にとって引き継がれません。
しかし、取引を結了させる目的の範囲内で宅建業とみなされる場合があります(残務処理)。
宅建業者の義務など
不当な履行遅延の禁止
宅建業者は、宅地・建物の登記、引き渡し、取引に係る対価の支払いについて、不当に遅延する行為をしてはなりません。
手付の貸付、その他信用供与の禁止
宅建業者が手付金を貸し付けたり、分割払いや後払いを容認することは禁止されています。これは、宅建業者が不当に契約を誘引する行為を規制するためのものです。
注意:手付金に関する金銭貸借のあっせん、手付金の減額は信用の供与に該当しません。
案内所等の届出
宅建業者(案内所を設置した業者)は、申し込み・契約を行う案内所等については、業務を開始する日の10日前までに、一定事項を「免許権者」および「当該案案内所当の所在地を管轄する都道府県知事」に届け出る必要があります。この届出が必要なのは、案内所等を設置した宅建業者です。
免許権者:都道府県知事・国土交通大臣
免許
免許証の返納
免許換えにより従前の免許の効力が失われたとき、免許取消処分を受けたとき、亡失した免許証を発見したとき、廃業等の届出をするとき、以上の場合には、免許を返納しなければならない。
もっとも、免許の有効期限の満了により免許の効力が失効した場合には、免許の返納義務はありません。
免許の更新
免許の有効期限は5年です。
免許を更新する場合、有効期間満了の日の90日前から30日前までに更新手続きをする必要があります。
更新手続は、業務停止期間中(最長1年間)であってもすることことができます。
届出
① 変更の届出
[ 宅建業者名簿 登載事項 ]
1.称号又は名称
2.事務所の名称・所在地
3.役員の氏名・政令で定める使用人の氏名
4.事務所ごとに置かれる専任宅建士の氏名
30日以内に届出をしなければならない。
② 廃業等の届出
免許欠格事由
[趣旨]
不動産業は、大きなお金を動かす仕事であるため、顧客の信用が大切です。その信用を失うような行為をした場合には、免許欠格事由にあたると考えられています。
三大悪質行為
[ 免許欠格事由 ~三大悪質行為~]
① 不正手段によって、免許を取得した
② 業務停止処分であり、情状が特に重い
③ 業務停止処分に違反した場合
法人と「役員」(聴聞公示前60日以内のもの)が欠格事由となります。
効果
免許取消処分 + 「5年間」免許不可となる。
刑罰に関するもの
1.禁錮以上の刑に処せられた者
2.宅建業法の規定に違反し罰金刑に処せられた者、刑法の一定の罰等を犯し罰金刑に処せられた者
※「刑法の一定の罰等」、傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反等のことをいいます。
執行猶予の場合
1.2に関し、執行猶予が付された場合、執行猶予期間中も欠格事由となります。もっとも、執行猶予期間が満了すれば、直ちに免許を受けることができます。
営業保証金
[ 営業開始までの流れ ]
1.免許の取得⇨2.保証金の供託⇨3.免許検者に対しての供託した旨の届出⇨4.営業開始
注意:免許権者は、免許をした日から「3ヶ月以内」に宅建業者が届出をしないときは、届出をすべき旨の催告をしなければならない。また、免許検者は、催告到達日から「1ヶ月以内」に届出がない場合、免許を取り消すことができます。
営業保証金の保管替えなどについて
① 金銭のみで供託をしている場合
⇨ 本店の移転後に、遅滞なく費用を予納し、営業保証金を供託している供託所に、営業保証金の保管替え請求をしなければなりません。
② 金銭・有価証券または有価証券のみを供託している場合
⇨ 本店移転後に、①遅滞なく営業保証金を新たに供託する必要があり、②供託後に従前の営業保証金を取り戻すことができます。
営業保証金の取戻し公告
原則:最低6ヶ月間の公告が必要になります(取戻し公告)
例外:①.保証協会に加入していること、②.本店移転による従前の営業保証金の取戻しの場合
指定流通機構
指定流通機構への登録
一般媒介契約の場合
⇨ 指定流通機構への登録についての規制はなく、登録するか否かは任意で決めることができます。
専任媒介契約の場合
⇨ 契約締結日から「7日以内」(休業日を除く)に登録する必要があります。
専属専任媒介契約の場合
⇨ 契約締結日から「5日以内」(休業日を除く)に登録する必要があります。
[ 登録事項 ]
① 物件の所在、規模、形質、売買すべき価格
② 物件に係る都市計画法その他法令に基づく制限で主要なもの
③ 専属専任媒介契約であれば、その旨の記載
指定流通機構に登録した宅建業者は、当該機構が発行する登録を証する書面を遅滞なく、依頼者に引き渡す必要があります(依頼者の承諾を得れば、電磁的方法による提供も可能)。また、宅建業者は、その登録に係る物件の契約が成立したときは、登録番号・取引価格・契約成立年月日、これらを遅滞なく、指定流通期間に通知する必要があります。
媒介契約書
宅建業者は、宅地・建物の「売買・交換」の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、媒介契約書を作成し記名押印をして、依頼者に交付しなければなりません。媒介契約書の作成等は、宅建士が行わなければならないわけではありません。
注意:賃貸の媒介は、媒介契約の規定の適用がないため、媒介契約の作成・交付は不要です。
[ 媒介契約の記載事項 ](以下、重要事項)
① 宅地建物を売買すべき価格またはその評価額(意見は根拠が必要:口頭でも可)
② 既存建物:建物状況調査のあっせんに関する事項(あっせんをしない場合も記載)
③ 媒介契約の有効期間・解除に関する事項
④ 報酬に関する事項
⑤ 指定流通期間への登録に関する事項
⑥ 依頼者が契約に違反した場合の措置
⑦ 標準媒介契約約款に基づくか否かの別
重要事項説明(35条)
[趣旨]
建物の購入者、賃借人が契約した後に「知らなかった!」と損をしないように、契約の前に不動産の重要事項について、宅地建物取引士が重要事項説明書を交付して説明することをいいます。
法令
宅地建物取引業法35条(重要事項の説明等)
1 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
三 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項
四 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
五 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
六の二 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
七 代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的
八 契約の解除に関する事項
九 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
十 第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要
十一 支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(第四十一条第一項又は第四十一条の二第一項の規定により保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。第六十四条の三第二項第一号において同じ。)を受領しようとする場合において、同号の規定による保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十二 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十三 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令
説明方法
説明義務者 | 重要事項の説明をするのは取引士(宅建士)です。 専任である必要はありません。 |
説明時期 | 契約が成立する前に行います。 |
説明場所 | どのような場所でもよい。 |
説明すべき相手 | 売買 「買主」に対して説明します 賃貸 「借主」に対して説明します 交換 「交換当事者」に対して説明します ※売主・貸主に対し説明は不要です。 |
説明方法 | 宅建士の記名がある35条書面を交付して説明します。 |
相手方が「宅建業者」である場合
⇨ 35条書面の交付のみで足り、重要事項の説明は不要です。ただし、宅建業者が信託受益権の売主となる場合には、相手方が宅建業者であっても説明が必要です。
重要事項 pickup
[ 35条書面の記載・説明事項 ]
① 登記された権利の種類等
② 法令上の制限
※ 建物の貸借では、ほとんどの法令上の制限の説明が不要になっています。注意:新住宅市街地開拓法、新都市基盤整備法、流通業務市街地整備法の一定の制限については説明が必要となります。建物賃借の場合、自分で建物を改築するなどの行為をすることが予定されていません。一方で、生活環境に関わるような法令nついては説明を求められます。
③ 私道負担
※ 建物貸借の場合には、説明が不要です。
④ 特別法
1. 水防法に基づく水害ハザードマップ(市町村の長が提供する図面)
※ 水害ハザードマップが作成されていなければ、作成されていない旨の説明も必要です。
2. 石綿(アスベスト)の使用の有無の調査結果
3. 耐震診断
⇨ 耐震診断を受けたものであれば、その内容を説明します。
注意:昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものは除きます。
4. 住宅性能評価
⇨ 貸借の場合には説明は不要です。住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨を説明する必要があります。
⑤ 既存建物状況調査等
※ 貸借の場合には以下の2.の説明は不要です。
1.建物状況調査(実施後1年経過していないものに限る)を実施しているかどうか、およびこれを実施地ている場合におけるその結果の概要
2.設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保存状況に関する書類※の保存状況の説明が必要です。保存状況とは、これらの書類の有無の説明のことを指します。
※ 具体例⇨建築確認申請書・確認済証・検査済証・建物状況調査報告書・既存住宅の建設住宅性能評価書等
⑥ 担保責任の履行に関する措置の概要
※ 貸借では説明は不要です。
[ 区分所有建物の追加事項 ](賃貸借は、①、②のみです)
① 専有部分の用途その他利用制限に関する規制
② 管理委託を受けている者の氏名・住所
③ 敷地に関する権利
④ 共用部分に関する規約
⑤ 建物・敷地の専用使用権に関する規約
⑥ 修繕積立金に関する規約
⑦ 維持修繕の実施状況
⑧ 管理費用
⑨ 特定の者の費用の減免
37条書面
書面記載事項
[ 37条書面記載事項 ]
必要的記載事項
① 当事者の氏名(法人は名称)・住所
② 宅地・建物を特定するために必要な表示
③ 代金・交換差金・借賃の額 その支払時期・方法
④ 宅地・建物の引渡し時期
⑤ 既存建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項(賃借:不要)
⑥ 移転登記の申請時期(賃借:不要)
任意的記載事項
① 代金・交換差金・借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額・授受の時期・授受の目的
② 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容の記載
③ 損害賠償額の予定・違約金に関する定めがあるときは、その内容の記載
④ 天才その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めがあるときは、その内容の記載
⑤ 種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合における不適合を担保スべき責任、またはその履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときには、その内容の記載(賃借:不要)
⑥ 宅地・建物の租税公課の負担に関する定めがあるときは、その内容の記載(賃借:不要)
⑦ 代金・交換差金についての金銭の賃借のあっせんに関する定めがある場合においては、当然あっせんに係る金銭の賃借が成立しないときの措置(賃借:不要)
[ 37条 貸借記載不要事項 ]
① 既存建物(必要的⑤)
② 移転登記の申請時期 (必要的⑥)
③ 担保責任 (任意的⑤)
④ 租税公課 (任意的⑥)
⑤ 金銭貸借 (任意的⑦)
交付義務
宅建業者は、宅建・建物の取引に関する契約を締結したときは、契約当事者に対して、遅滞なく、37条書面の記載事項を記載した契約書面を交付しなければなりません。なお、宅建士は、重要事項説明とは異なり、契約内容を説明する必要はありません。
交付者 | 宅建業者 |
交付時期 | 契約成立後、遅滞なく行います。 |
交付場所 | どのような場所でもよい。 |
交付すべき相手 | 契約当事者の双方に交付します |
交付方法 | 宅建士の記名がある書面を交付します。 |
※相手方が宅建業者であっても、交付する必要があります。
広告など
未完成物件の広告
⇨ 必要な許可等を受けた後に広告・契約の締結をすることができます。
※ 貸借の媒介・代理の契約締結については、制限はありません。
8種制限
適用場面
⇨ 宅建業者 と 宅建業者以外の者 が契約する場合に適用されます。
担保責任の特約の制限
原則:民法のルールより不利な特約は無効となり、民法が適用されます。
例外:責任追及期間を引き渡しの日から2年以上となるなどの特約は有効です。
他人物売買
原則:宅建業者は、他人が所有するなどの自己の所有に属しない宅地・建物について、自ら売主となる売買契約・売買予約契約を締結してはなりません。
例外:宅建業者は、他人との間で宅地・建物の取得契約(予約契約を含みます)を締結しているときは、自ら売主となる売買契約・バイバ予約契約を締結することができます。契約を締結していればよく、代金が未履行であってもかまいません。
ただし、その取得契約に停止条件等が付されている場合には、他人物売買をすることはできません。
損害賠償額の予定・違約金の制限
宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償請求額を予定しまたは違約金を定めるときは、損害賠償の予定額、違約金を合算した額の「10分の2」を超えることを定めることはできません。大金額の10分の2を超える部分については、無効となります。
クーリング・オフ
● クーリング・オフできない場所
以下の「事務所等」で買受の申込みや売買契約の締結をした場合、クーリング・オフをすることができません。
① 事務所(本店・支店など)
② 宅地建物の分譲を行う案内所(土地に定着するものに限られます)
③ 相手方(申込者・買主)が申し出た場合の、相手方の自宅または勤務先
※ 売主の宅建業者から、代理・媒介の依頼を受けた宅建業者が、①または②を設置する場合も、クーリングオフできない場所に該当します。
● クーリング・オフできない場面
下記の場合には、クーリング・オフできません。
① 相手方が宅建業者からクーリング・オフができる旨およびその方法を、書面で告げられた日から起算して「8日間を経過したとき」
② 相手方が宅地・宅建の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき
手付金等の保全措置
8種制限が適用される場面では、宅建業者は、原則として保全措置を講じなければなりません。
手付金等(中間金等)とは、保全措置が必要となるお金です。契約締結日以後、物件の引渡し前までに支払われる金銭で、売買代金に充当されるものが対象となります。
[ 保全措置が不要となる例外 ]
以下のいずれかに該当する場合、宅建業者は、保全措置を講ずることなく、手付金等を受領することができます。
① 宅建業者が受領する手付金等の額が一定額以下の場合には、保全措置は不要です。
※ 超過金額のみに保全措置を講じればよいわけではなく、全額について講じます。
未完成物件の売買 | 代金額の「5%以下かつ1000万円以下」の場合 |
完成物件の売買 | 代金額の「10%以下かつ1000万円以下」の場合 |
② 買主が所有権の登記を備えた場合
[ 保全措置の種類 ]
① 保証委託契約(銀行) ② 保証保険契約(保険会社) ③ 指定保管機関(保証協会)
未完成物件の売買であれば、③を利用することはできません。
完成物件の売買であれば、すべてを利用することができます。
報酬
報酬の限度額
売買
税抜価格200万円以下 ⇨ 税抜価格 ✕ 5%
税抜価格200万円超~400万円以下 ⇨ 税抜価格 ✕ 4% + 2万円
税抜価格400万円超 ⇨ 税抜価格 ✕ 3% + 6万円
※ 建物には税金が含まれているので、建物額を求める場合には、÷ 1.1をします。
媒介
一方から受領できる限度額 ⇨ 売買計算式 ✕ 1.1倍(消費税分)
※ 両手取りをすることもできます。
代理
一方から受領できる限度額 ⇨ 売買計算式 ✕ 2 ✕ 1.1倍(消費税分)
注意: 一取引の報酬合計限度額は、媒介報酬限度額の2倍以内である必要があります。
貸借
原則 ⇨ 家賃の一ヶ月分を限度額とします。
「権利金を売買代金とみなして計算した報酬額」と「通常の賃貸の媒介・代理に関する報酬額」を比較し、高い方を依頼者から受領することができます。
[ 例外の条件 ]
① 居住用建物以外の賃貸借であること
② 返還されない権利金の授受であること
低廉な空家等の特例
低廉な空家等の額 ⇨ 400万円以下の空き家をいいます。
売主から受領できる限度額 ⇨ 税込 19万8000円
(通常の報酬限度額 + 現地調査等の費用)
買主から受領できる限度額
⇨通常の報酬限度額に限ります。
注意点 貸借は対象外です。また、建物に限らず宅地も含まれます。
監督・罰則
行政処分
指示処分 | 業務停止処分 | 免許取消処分 | |
免許権者 | できる | できる | できる |
他の都道府県知事 | できる | できる | できない |
聴聞の有無 | あり | あり | あり |
公告の有無 | なし | あり | あり |
[ 必要的取消事由 ]
免許取消処分は、免許権者のみが行うことができます。
① 免許の欠格事由に該当したとき
② 免許替えの手続きが必要であるにもかかわらず、怠った場合
③ 免許を受けて1年以内に事業を開始せず、または引き継いで1年以上事業を休止したとき
[ 任意的取消事由 ]
① 免許権者が宅建業者の事務所所在地等を確知できないとき、官報等で公告し、その公告の日から30日を経過しても当該宅建業者から申出がないとき
宅建士に対する過料制裁
[ 過料制裁(10万円以下)事由 ]
① 宅建士証を返納しなかった
② 宅建士証を提出しなかった
③ 重要事項説明時に宅建士証を提示しなかった
住宅瑕疵担保履行法
資力確保措置
宅建業者である売主が、宅建業者でない買主に対して、新築住宅を引き渡す場合に、資力確保措置が義務付けられます。なお、売主・買主ともに宅建業者である場合、代理・媒介を行う宅建業者の場合には、資力確保措置は不要です。
住宅売買瑕疵担保責任保険契約
① 宅建業者が保険料を支払うことを約するものであること
② 損害をてん補するための保険金額が2000万円以上であること
③ 保険が新築住宅の引渡しを受けたときから10年以上の期間にわたって有効であること
宅建業者は、基準日から3週間を経過する日までの間に、当該基準日前10年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引渡した新築住宅について、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている必要があります。
供託金の所在地等に関する説明
⇨ 宅建業者は、買主に対して売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている所在地等について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければなりません。
免許権者への届出・売買契約締結の制限
新築住宅を引渡した宅建業者は、基準日から3週間以内に、当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託、住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結状況、これらについて、免許権者に届け出る必要があります。
宅建業者が供託、届出を行わなかった場合、当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結することが禁止されます。
[ 住宅瑕疵担保履行法の重要な「時期」について ]
保証金の供託時期 ⇨ 基準日から3週間を経過する日までの間にします
供託所関係の説明時期 ⇨ 売買契約を締結するまでにします
免許権者への状況届出時期 ⇨ 基準日から3週間以内にします
売買契約の禁止時期 ⇨ 基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後の時期です
コメント